ハングルと日常

ハングルキーワードから綴るささやかなエッセイ

話題のベストセラー「82年生キム・ジヨン」を想う。

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こんにちは。カノンです。

今日は韓国の小説の話を少し。

 

私はどんなに話題であっても、例えベストセラーであっても

興味を持てないうちは読む気になれず、手にとることもないの

ですが、ある日ふと「読んでみようか」と思える日が

来ることがあります。(誰でもそうかもしれませんが、)何か

その本のタイトルから、自分自身が感じる何かがあるのかも

しれませんね。

 

2016年に出版され、その後韓国でベストセラーとなった

「82년생 김지영(82年生キム・ジヨン)」も、私にとっては

そんな本の一冊でした。書店でこの本だけ山積みにされていて、

目についたのがきっかけでした。

 

この本の前評判も知りませんでしたし、当然あらすじも

知らなかったのですが、「82년생(82年生まれ)」

という単語と、そのあとに女性の名前が続くタイトルに、

何かピンときて、久々にハングルの小説でも読んでみようか、

とすぐにレジに向かいました。

 

このタイトルにピンと来たのは、私自身が82年生という

年代に比較的近い世代であることから、おそらくストーリー

に共感できる何かを感知したのだと思います。

 

そして、感動的な家族愛を描いた小説よりも、

男女の悲劇的な恋愛ものよりも泣けました。

 

この小説は、82年生まれのキム・ジヨンという女性の

人生の物語で、そこには女性だからこその苦悩や違和感、

社会への疑問などが描かれています。

 

韓国社会が背景にありますが、実際には世界中の

女性が共感せざるを得ない事実ばかりだと思うのです。

特に日本を始めとする東南アジアで、

”キム・ジヨン”は多くいると思うのです。

 

OECD男女賃金格差について言及したページ(原書:P124)

がありますが、最新データを見れば、1位韓国、2位エストニア、

3位日本という順位です。(Gender wage gap 2018,2016)

2016年の統計では日本は2位となっています。韓国も日本も

多少の差はあれ、似たようなものです。

 

出産と育児がキャリアの断絶となってしまうこと、

共働き夫婦でも、家庭で主に家事と育児を担うのは女性、という

事実も同じ。そしてそれは、私たちのおばあちゃんの時代から

今まで、女性が負担する役割に変化はなく、21世紀の今でも

いまだに女性の社会進出を阻む壁は高いわけです。

 

韓国も日本も女性の権利や立場がまだまだ弱く、

社会で認められているとは言い難い。うわべで平等を

掲げていても、蓋をあけてみたらそうではないことが

当たり前のように転がっています。

小説の中のひとつひとつの事柄に、自分自身の経験を

重ねることが容易にできてしまう。韓国の女性でなくても、

です。

 

この本の中で個人的に、より印象が強かったのは、

韓国語では시댁(シデク)と言いますが、夫の両親宅との

関係ですね。旧盆や旧正月には시댁に行き、祖先祭祀の

ための供え物の準備をするのですが、基本的にこれは

女性の役割です。こういった役割もそうですが、結婚後の

女性が、夫の実家といかに関わるか、そしてその難しさや

そこから生まれるわだかまりのようなもの、それは

韓国人と結婚した日本人女性も他人事ではありません。

こういった意味でも、この小説は韓国人男性と結婚し、

在韓生活を送る日本人女性にも、まるでキム・ジヨンの

ように共感できる部分があります。物語の中で、キム・ジヨンは

非常に率直に夫の両親に対して시댁に対する違和感をぶつけます。

この時彼女は、精神的にダメージを受けている状態では

あったものの、彼女のこの違和感を理解できる女性は多いはずです。

そして、夫の思考に対する疑問と抵抗など、今の時代を生きる

女性だからこその葛藤が決して他人事ではないのです。

 

一度湧き起ったら、消えることなく次第に大きくなる

複雑な感情の核心は何か。探ってみれば、男女の違いに起因する

問題が少なくないことにも気づかされます。

 

著者のチョ・ナムジュさんは、あとがきで、”娘が大きくなる頃には

自分が生きてきた世の中より良い社会になっていなければならず、

そうなると信じ、そうさせるために努力している”、と書いて

おられますが、一読者の私自身、娘がいる母親であり、やはり

作者と同じように、娘が大人になった時には、女性が

より自然に、そして放棄せなばならないことが少ない世の中に

なっていることを願わざるを得ません。

 

「82년생 김지영(82年生キム・ジヨン)」、

この小説、私は一人でも多くの男性に読んでいただきたい、

そう思います。

 

では、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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